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危険な香りに誘われて
第11章 夜空に咲く花の下で
ベビープールに浮かべたヨーヨーつり、スーパーボールすくい、輪投げに的あて、ラムネ、たこ焼き、おでん。
先生と保護者役員の手作り縁日は、子供と保護者達でにぎわっている。

幼稚園の門をくぐった途端、雄介は、真紀の手を離し、仲の良い友達と手を繋ぎ、所せましと園庭を駆けまわり始めた。
真紀は、転んで怪我しないか、ハラハラしながら雄介の跡を追いかけている。

賢也は、園庭の隅っこで、その風景を眺めていた。
全く無縁だった世界。
真紀と結婚して、子供でも出来たら、自分もこの世界に溶け込めるかもしれない。

突然、頬が冷りとした。真紀が、ペットボトルのお茶を賢也の頬にくっつけている。

「冷たくない?」

「ん、ああ。冷てぇよ」

表情を変えない賢也を見て、真紀は、つまんないとぼやいた。

「なーんか、リアクションが地味」

「そうか」

「暑くてバテてんじゃないの?」

「確かに、暑いよな」

賢也の視線は、はしゃぎ回る子供たちに向いている。ふと、真紀は、訪ねてみたくなった。

「賢也、子供好き?」

「どうだろう。小さいのは、身近にいないからな。教えてんのは、中高生だし。でも、結構見てんのは、面白いかな。ゼンマイ仕掛けのオモチャみたいだ」

「そのうち、そのオモチャのパパになるかもよ?」

賢也は、口にしたお茶を吹き出した。慌てて口元を拭う。何度も瞬きをしながら、真紀を見下ろした。


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