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危険な香りに誘われて
第11章 夜空に咲く花の下で
「今日は、すまんかったな」

真紀の父親が、ビール瓶を手にする。賢也は、「すみません」と一言添えてグラスを持ち上げた。
夕方三人が戻ると、両親も兄夫婦も帰っていた。賢也をもてなそうと、出前の鮨が台の上に並んでいる。

「いえ、こちらこそ。挨拶が遅くなって、すみませんでした」

「そんなかしこまらんでもええ。ほら、足崩しや。しんどいやろが」

「はい」

兄嫁が、枝豆と酢の物となすの煮びたしと牛すじ煮込みを台の上に置いた。父親は、家庭菜園で育てた、枝豆を勧めた。

「ごめんなさいね、何もなくて」

母親が、ビール瓶を2本追加で持ってきた。

「いえ、十分です」

賢也、なんか、いつもと違う?ちょっと緊張してない?
見慣れない賢也の態度を見て、真紀がにんまりした。

「で、岡崎さん」

「はい」

ニコニコしていた父親が、突然、厳しい顔で賢也を見据える。

「あんたに聞きたいことがある」

うわっ、父さん、何を言いだすんだ?真紀は、身構えてた。変なことを言いだそうものなら止めなくては。箸を持つ手に力が入る。

「野球は、好きか?」

「はい」

「どこのファンだ?」

「阪神です」

父親は、面白くないと渋い顔をし、隣にいる兄は、目を輝かせた。
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