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危険な香りに誘われて
第12章 皇帝
「くだらないって、塾の経営は、お・・お父さんが賢也に任せているんじゃないんですか」

皇帝は、グラスに入った酒を一気に飲み干した。

「大川のババァが、あれに与えた物だ。全く、余計な事をしてくれたものだ」

「大川?」

「私の元妻の母親で、大川建設の会長だった。長い間寝たきりだった癖に、権力だけは、最期まで、しっかり握って手放さない」

「あの、賢也のお母さんは、今どこに?」

「聞いてないのか」

「出て行かれたとだけ」

真紀は、小さく首を横に振った。

「出て行った翌日、池から遺体で発見された」

真紀は、手で口を塞いだ。衝撃過ぎて、言葉も出ない。

「あれが第一発見者だった。いつも魚を見に行く池だと知っていて、あの女は、あそこを選んだ」

「ぐっ」

吐き気がした。そんな酷い事をどうして。真紀は、込み上げる怒りに肩を震わせた。
たった5歳の子供が、母親の死体を見つける。どれほどショックだったか分からない。

「お客様っ」

廊下が騒がしい。
足音が近づき、勢いよく障子が開く。
真紀が、振り向くと賢也が、鬼の形相で息を切らして立っていた。

「真紀を使うなんて、卑怯だぞっ」




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