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危険な香りに誘われて
第13章 陽の当たらない世界
翌朝、朝寝坊した二人は、久しぶりにのんびり休日を過ごしていた。
リビングのラグの上で、うつ伏せになった賢也の足裏を真紀が、ムギュムギュと踏みつける。

「水虫とか無いよね?」

「ねーわっ」

「私あるかも」

「おいっ、靴下履けよ」

「冗談だって」

「あー、気持ちいい」と下から至福の声が聞こえ、真紀は、ふっと笑顔を零した。

「真紀ちゃん、背中も踏んでくれ」

「注文多いでっせ、旦那」

賢也の広い背中を踏み踏みするとシャツで滑りそうになる。バランスを保つのが難しい。

「シャツ脱いでよ」

「何だよ、朝やったばっかなのに元気だな」

「違うっ。シャツが滑るの」

「お前、本当に水虫無い?」

「ないわっ」

賢也は、ムクッと起き上がり、胡坐をかくと、Tシャツを脱いだ。

「あれ、賢也。お腹の肉が」

「おー、ちょっと引きしまった?」

「うん」

賢也が、自分のお腹を摩りながらニヤリと笑う。
そして真紀のお腹を掴んだ。

「誰かさんのお腹は、やばいよなーっ」

「ギャーッ」

「なんだ、この腹。たるんでんな?おらっ、掴めんぞ。ハハハ」

「しょうがないでしょう。二人分食べてたら太っちゃったの」

その瞬間、笑い声が消え、脇腹を掴んでいた手が離れた。

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