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危険な香りに誘われて
第13章 陽の当たらない世界
真紀の顔に後悔が浮かんでいる。口を滑らしただけで、言葉にするつもりは無かったんだろう。賢也は、自分の膝上に真紀を座らせた。

「俺の事なんか、気にしなくていいのに」

「・・・でも、賢也、もしかしたら、早く帰ってくるかもしれないじゃない。そん時、何もないの嫌だもん」

「真紀ちゃんの腕なら、急に帰っても適当に出来んだろ?早く帰れそうな時は、連絡するから。な?」

フッと目を細めて笑う賢也を見て、真紀の胸がキュッと締め付けられる。泣きそうになったのを誤魔化すように賢也の首に腕を回してギュッとしがみついた。

「好きって言って、賢也」

「真紀?」

「私のこと好きって言って」

涙声だった。賢也の胸に痛みが走る。真紀に泣かれることが、何より苦手だ。原因は、自分にある。どうやって慰めていいかも分からない。

「俺が、どうしようもないほど惚れてるって知ってんだろ?」

「知らない」

「頭悪いな」

「うっさい。最近、賢也の愛が足りないからだよ」

「体で証明してやろうか?」


賢也が、どっか行っちゃいそうで怖い。
不安で、不安で仕方ない。
どれだけキスしても、どれだけ抱き締められても安心なんて出来ない。
心配で、たまらない。
皇帝が、私の知らないところへ賢也を連れて行っちゃうんじゃないかって。
不安が、消えない。
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