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危険な香りに誘われて
第13章 陽の当たらない世界
缶ビールを3本手にリビングへ戻ると、和也が、次のたこ焼きを焼く準備をしていた。
慣れた手つきで、たねを注ぎタコ、生姜、ネギ、天かすを入れていく。ふいに和也が顔を上げた。

「オカケン、今日、どっか行ってんの?」

「うん、なんか用事があるって」

真理が、テーブルのビールに手を伸ばす。

「最近、あいつ連絡つきにくいんだけど、忙しいの?」

「おー、今日も掛けたら留守電だった」

「剛も連絡とりにくいって言ってたな」

真理は、缶ビールを真紀に差し出した。

「オカケン、何かあった?」

真理の一言に体が固まった。微かに震える手を重ね、膝に置く。
いつだったか、何かあったら相談してと真理から言われたことを思い出し。
父親のことを訪ねてみようか。そうすれば、賢也が何をしているのか分かるかもしれない。
口を開きかけた時、テーブルの上に置いたスマホから着信音が流れ画面へ視線を向けた。

「・・・・賢也」

『真理の家にいるのか?』

「う、うん。今さっき来たところ」

『1時間くらいで俺も行くから、真理に伝えといてくれ』

「う、うん、分かった・・・・」

離れているのに、感じる重苦しい空気。どちらも押し黙ったように沈黙が流れる。真紀は、賢也の言葉を待った。

『・・・・あいつらに余計な事言うなよ。心配するから』

真紀の返事を待たずに、電話が切れた。


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