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危険な香りに誘われて
第13章 陽の当たらない世界
たこ焼きパーティーも終盤、真紀がキッチンに汚れた器を運ぶ。千佐子は、キッチンに立ち、手早く洗い物を片付けていく。その間も、男達は、乾きものを肴に焼酎を飲んでいた。時折聞こえる笑い声、賢也の笑い声も交じっている。どうして、笑っていられるのか。どうして、親友たちに相談しないのか。

千佐子は、タオルで手を拭った後、布巾に手を伸ばし、洗い終わった食器を拭こうとしたが、ぼんやりたたずむ真紀が気になって、手を止めた。

「真紀、何かあったの?」

「えっ」

布巾を手にしたまま近寄り、真紀の顔をのぞき込んできた千佐子が、眉間に皺を寄せ。

「まさか、オカケンさんが、浮気しているとか言う?」

「ち、違うよ。浮気なんて」

「じゃあ、どうしたの?」

「何もないよ。千佐ったら、変なこと言わないでよ」

平静を装って返事をしても声が上ずってしまう。

「私に嘘つかないでよ。今日の真紀、ずっと無理して笑っているみたいに見える」

「そんなこと・・・・」

真紀は、言葉を詰まらせた。

「私ら10年以上の付き合いだよ。見れば分かる」

だんだん千佐子の声が大きくなっていく。その声は、リビングにまで響いていた。

「真紀、何があったの?私にも言えない事なの?ねぇ」

堪え切れずに涙が、溢れ、ぽたり足元に落ちた。
千佐子のひんやりした手が、真紀の腕を掴む。
堰を切ったように涙が、止まらない。真紀は、声を殺すように泣いた。

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