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危険な香りに誘われて
第13章 陽の当たらない世界
賢也が異変に気づき、キッチンへ入ってきた。
泣いている真紀を抱き寄せると頭に唇を落とし背中を摩った。

「ごめんね、千佐ちゃん。こいつ、ちょっと情緒不安定みたいで」

「そうさせているのは、オカケンさんでしょう?」

千佐子が、怒りの交じった声で、賢也を責めると、今度は真理が駆け寄ってきた。

「真紀に何したの?」

原因など知るはずもない。それでも千佐子の目は、怒りに満ちている。

「真紀を傷つけたら、私、オカケンさんを許さないから」

「そんなこと」

「じゃあ何で、真紀が泣いてんのよ。何で、無理して笑ってんのよ。説明してよ」

「千佐子」

真理が、千佐子の腕を掴んだ。

「離してよ、真理さん」

「落ち着いて」

真理の手を振り払おうと暴れる。

「だって、真紀が、真紀が」

「わかったから、興奮するな。大きな声出したら、お腹の子がビックリする」

千佐子を宥めるように真理が、抱き締め、お腹をさすった。

「真紀は、大事な親友なの。お願いだから、泣かさないで」

泣きながら訴える千佐子の言葉が、賢也の胸に突き刺さる。
キッチンの入り口から様子を伺っていた剛が、賢也の肩を軽く叩いた。

「とりあえず、向こうで話さないか?」

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