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危険な香りに誘われて
第13章 陽の当たらない世界
「俺の祖父と親父は、元暴力団員だ。祖父は、津嶋会本部の最高幹部で、二次の浅野組、組長だった。一般市民を巻き込む発砲事件がきっかけで、浅野組は解散。祖父は、銃刀法違反で5年ほど務所に入ることになった」

真紀は、愕然とした。津嶋会は、関西でも有名な暴力団。
組長射殺で近くにいた市民を巻き込んだ事件は、大きくニュースで取り上げられた。

「もう一度組を作ってオカケンさんに跡を継がせるつもり?」

「いや、違う。出所した祖父は、本部の組員だった親父を社長に仕立て上げ、暴力団のフロント企業を起ち上げた。親父も今更、もう一度浅野組の看板立てるつもりなんて無いさ。だが、組があった方が、俺としてはありがたかったかもな。そうすれば、俺を引き込むことは無かったかもしれない」

「どうして?組が残っていたら、オカケンさんは若頭になるんじゃないの?」

賢也が、軽く笑って首を小さく振ると、真理が言葉を繋いだ。

「息子が、同じ世界に入ることは、あっても跡目を継ぐことはあんまりないんだよ。ヤクザってのは、親子の擬制的血縁関係で成り立つ社会だからね。若頭になるのも、組長は勿論だけど、子分や兄弟分が認めなくちゃならないし、よほどの器と他人を蹴落としてのし上がる根性が無いと無理だろうね。大きな組織になるほど、実の息子が時期組長候補になる事は、ないんだよ」

「じゃあ、何でオカケンさんを引き込みたいの?」

「会社は、組じゃないからね。オカケンを会社のトップに仕立て上げて、親父さんは、隠居しても実権を握るつもりなんだと思う。お爺さんが、そうしてきたから。でもこれは、俺たちの見解で、親父さんの真意は、分からないけど」

「ま、そういうことだ」


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