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危険な香りに誘われて
第13章 陽の当たらない世界
「で、オカケン。お前、この先どうすんだよ」

賢也は、自分の手を握り締めて深く呼吸した。

「潰す」

「えっ」

「組を潰す」

「マジかよ」

「今は、黙って親父の言うこと聞いてるけどな。いずれ警察に情報を渡してやるつもりだ」

冗談じゃ済まされない。どぶ川で親友の遺体が発見されるかもしれない。真理も剛も和也までもが、身を乗りだした。

「お前、分かってんのか。相手は、津嶋会だぞ。そんな事をすれば、間違いなく殺されちまうぞ」

「ネタは、色々ある。土地ころがし、地上げ、マネーロンダリング、インサイダー取引、海外では、人身売買にまで手を出している。他にも下請けの下請けにさせている、振りこめ詐欺、売春、麻薬密売と色んなことに手を出している。警察だって、チャンスがあれば、潰したいだろ。俺を引き込んだ親父に後悔させてやる」

真紀は、握りしめていた自分の掌が、汗だくになっていることに気づいた。
まともな話じゃない。今まで、関係ない世界だとばかり思っていた。
賢也は、今、その世界で一人戦おうとしている。考えるだけで息が出来ないほど胸が締めつけられる。

「賢也が殺されるなんて・・・・嫌だ」

恐怖に震えている真紀を賢也が覆いかぶさるように抱き締めた。

「だから、お前には、言いたくなかったんだ」

「逃げようよ。ね、賢也」

逃げる。そう出来たら、どんなに良いだろう。

「そんなことしてみろ、お前の実家に迷惑が掛かる」

真紀は、賢也にしがみついて泣いた。

「何があっても守るから、お前は、何も心配しなくていい」

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