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危険な香りに誘われて
第13章 陽の当たらない世界
家に帰ると賢也が、「怖いか?」と尋ねてきたので、真紀は、「怖いよ」と素直に頷いた。

「もし、別れたら・・・・。賢也は、また自由になれる?」

言葉にするのも苦しい。それでも賢也の足枷を取り払うことが出来るなら、自由になれるなら、それも仕方ない。

賢也は、苦笑した。

「無理だ。親父は、俺の気持ちを見抜いている。例え別れても、お前を利用するだろうな」

賢也は、ソファにドサッと腰を下ろした。
足を大きく広げ、膝の上に肘を置き、俯き加減に、ため息をつく。

「でも俺といるのは、怖いよな。離れて暮らすか?どこか別のマンションを買ってやるから、そこに一人で住むか?」

「賢也は、私を一人で住まわせたいの?」

賢也の指先に触れ、真紀は、その冷たさに驚いた。

「俺が、そんなこと望んでいるとでも思うか?」

自分の胸に賢也の顔を押し当てるように抱き締めた。

「だったら、そんな事言わないでよ」

「真紀」

「強くなくて、ごめんね。泣いてばかりで、ごめんね。きっと、これからも、いっぱい泣くと思う。でも、賢也と離れたくない。側にいたい」

賢也には、時折見え隠れする狂気な部分がある。
どんな暗闇を彷徨っても、その先にある光を見失わないように、側にいてずっと灯りを照らしてあげたい。

希望は捨てない。
いつか、大変だったねって笑える日がくる。

何があっても守ると言ってくれた。
だから私も何があっても賢也とは離れない。
一緒に生きていこう。

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