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危険な香りに誘われて
第14章 門限
葉月は、二人を見てケラケラ笑った。

「大丈夫だって。他で飲んだのと変わらない値段だから、安心して?ね」

同調を求めるように従業員の男の肩に手を置く。従業員は、大きく頷いた。

「そう、うちは飲み放題の居酒屋と変わらない値段で楽しめる安心安全健全なクラブって有名なんだよ」

従業員が、郁美の後ろに立ち、両肩にポンと手を乗せて顔をのぞき込む。

「大丈夫だって。嘘だと思うなら入って確かめてよ」

そういう問題じゃない。ホストクラブに来たなんて賢也にバレたら、お仕置きで済まされない。考えただけでも、身震いする。真紀は、首を横に振った。

「帰ろ・・・」

「ねぇ、なにやってんの?もしかしてホストクラブって初めて?」

別の従業員が現れ、真紀の声は、かき消された。

「ほら、こんなところで立ってないで、入って、入って。葉月ちゃんのお友だちならサービスするから」

背中を押され、店内へ押し込まれてしまった。薄暗い店内、耳障りなほど煩い音楽。シャンパンタワーで盛り上がる声。場違いな店に連れてこられた。二人は、うんざりした顔で互いを見合わせた。

「私ら、すぐ帰るよ、葉月」

「うん、わかった」
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