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危険な香りに誘われて
第14章 門限
郁美は、真紀の腕を掴み、立ち上がらせる。

「帰るよ」

「うん」

「お客様お帰りです。お会計おねがいしまーす」

従業員が持ってきた伝票を見て、真紀と郁美は、顔を見合わせた。

「は?」

「何、これ。冗談でしょう?」

どう見ても一ケタ多い。目を凝らしたが、間違いない。伝票の数字は、25万8千円と書かれている。真紀は、咄嗟に鞄からスマホを取り出した。LINEで賢也を検索し、無料電話を掛け、ホストたちに見つからないようにバッグへスマホをしまい込む。

「ふざけないでよ」

「ふざけてませんよ。うちは、高級ホストクラブですからテーブルセット料金は、格安なんですけどね、ほら、ホストが5人もついたでしょう」

「こっちは頼んで無いっ」

「葉月さんに言ってくださいよ」

ホストたちは、ヘラヘラしたまま応対する。

「現金でお願いします」

「誰が、払うか。行くよ、真紀」

「無銭飲食かよ。おい、奥連れて行け」

ホストの顔つきがいきなり豹変し、顎で他のホストに合図を送った。

「きゃーっ、痛い。乱暴しないでよっ」

「騒ぐなっ」

「助けてっ」



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