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危険な香りに誘われて
第15章 明けない夜はない
「この近くに美味い、うなぎ屋があったな」

吉田の言葉に反応した広川が、身を乗り出し、運転している板倉の肩をトンと叩く。

「板倉、川吉行け」

「はい」

表通りの二本筋中へ入るだけで、景色がガラリと変わる。
ハイツや小さな寺、ピンサロの入ったビルが立ち並ぶ通りにうなぎ屋川吉は、店を構えていた。狭いコインパーキングの敷地内へベンツを乗り入れ、板倉は先に三人を降ろした。
そして慎重にベンツを駐車する。

「板倉、お前は、うどんでも食ってろ」

広川が、からかうと、板倉は置いて行かれまいと、慌てて三人を追いかけた。

「待って下さい」

笑いながら店へ向かう途中、ふと、電柱の影に隠れている男女の姿が、賢也の目に止まった。若い男と中年の女。女の側には、買い物帰りなのか、食材を詰め込んだスーパーの袋を前カゴに乗せた自転車が止まっていた。
一見どこにでもいる普通の主婦。しかし、やたら周囲を気にし、挙動不審な態度。二人が何をやっているか一目瞭然。

吉田が、道端に唾を吐く。

「あほが、丸わかりじゃねぇか」

広川が、フンと鼻で笑う。

「ほっとけ。うちの者じゃねぇ」

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