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危険な香りに誘われて
第15章 明けない夜はない
「本当に、うちは、やってないんですか」

黙って三人の会話を聞いていた賢也が、口を開いた。

「やってねぇよ」

ケロッとした顔で、広川が言う。賢也は、顔をしかめた。

「うちの会社は、禁止されているって言っただろう」

「ええ、まぁ」

「そういうのは、別の末端グループが請け負っているから、俺達は、知る必要ねぇんだよ。むしろ、知らない方がいい。わかるか?ちゃんと会費を納めさえすれば、上は、それでいいんだよ。つまり、警察沙汰になって、そいつらが捕まっても上は、知らんで済ませられる」

「金さえ、納めりゃ、それでいいんですか?」

「そうだ。架空請求、シャブの売買、売春、詐欺、窃盗なんて仕事は、下の奴らが勝手にやっていることだ」

「勝手にって、わかっているのに?」

「そいつらだって、危険を承知でやっているんだよ。他に稼ぐ手立てがないからな。ゴミみたいに扱われている奴らが、他にどうやって稼いで生きて行くんだ?」

「そうそう。あいつらにも生きて行く権利はある。それに違法だってわかっているのに手を出したり、騙される奴が悪いんだよ」

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