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危険な香りに誘われて
第15章 明けない夜はない
「爺ちゃんが、作ってくれた人には、感謝するのが礼儀だって。それが、頂きますって言葉なんだって煩かったんですよ」

「ほう。爺さんは、何している人なんだ?」

吉田は、二本目のタバコを灰皿に押しつけ、おしぼりを手に取ると広げて顔と手を拭いた。

「坊さんでした。親父も兄貴も」

「爺さんは、死んだのか」

吉田の問いかけに板倉は、一瞬暗い顔を見せた。

「はい。もういません」

「お前は、坊主になろうと思わなかったのか」

「俺は、根性なしなんで、修行と田舎暮らしが嫌で逃げたんです。こんな俺を拾ってくれた広川さんには、すげぇ感謝しているんですよ」

「その割には、いつも遠慮なく同じメシくってるよな?人の奢りで」

板倉は、「すいません」とヘラヘラ笑いながら頭を撫でた。

普段、明るく振るまっているが、板倉には、どこか陰りが見える。
売人のことを吉田たちに訪ねたことも、賢也には、引っ掛かっていた。
組入りを志願して本部の前をうろついていたところを拾ったと広川は、言っていたが、どう見ても、そんなタイプじゃない。
何も考えていないバカなのか。

「めちゃくちゃ美味いっスね」

それとも・・・。




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