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危険な香りに誘われて
第15章 明けない夜はない
「お前の親戚に警察の偉いさんがいたよな?」

「あ、ああ」

休日に、突然呼び出して、いきなり叔父を紹介しろと言う。真理は、ハッとした。

「やめとけ。津嶋会、末端まで入れたら、いったい何人いると思ってんだ?1万近くいるんだぞ」

津嶋会本部の組員は、80人足らずしかいない。だが、その組員の殆どが、それぞれ二次と呼ばれる組の組長だ。二次の中には、500人以上の構成員を抱える組もある。さらに、二次の幹部たちは、3次と呼ばれる組の組長と津嶋会は、巨大なピラミッド型の組織なのだ。
本部にケンカを売るということは、その傘下にいる全員から狙われることとなる。

賢也が、ケンカに強いことは承知している。一度も負けたことがないことも。だが、今回は、相手が悪すぎる。どう考えても勝ち目があるとは思えない。真理は、テーブルに腕を乗せ、身を乗りだした。

「分かってんのか」

「もちろん」

賢也は、小さく頷いた。何故、そんなに落ち着いていられるのか。真理は、不思議に思った。

「下手すりゃ死ぬかもしれないんだぞ」

「じゃあ、どうしろってんだ?」

「親父に頼んで、真紀ちゃんの実家を守ってもらう。あそこは千佐の実家もあるし、俺だって他人事じゃない。親父に、話をすれば絶対、協力してくれるに決まっている。うちが、結城産業が関与すればオカザキも津嶋も、そう簡単には、手を出してこない」

賢也は、声を出さずに笑った。

「お前、やっぱり良いところのお坊ちゃんだよな」

「どういう意味だよ」

「楽観的だってことだ」
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