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危険な香りに誘われて
第15章 明けない夜はない
根津は、二人を応接間に通した。
飾り気のない家は、どことなく男所帯の雰囲気が漂っている。
妻を早くに亡くし、今は、父親を尊敬するあまり同じ道を目指そうとする大学生の息子と二人暮らし。息子がこのまま自分と同じ道を歩めば、根津家は、三代続けて警察官出身となるのだ。


白髪交じりの温和そうな顔立ちだが、やはり警察の人間。
臭いが違う。賢也は、根津に父親とは、また違うオーラを感じた。

津嶋会を潰したい。賢也は、自分の現在の立場を説明し、知り得た限りの情報を渡したいと根津に熱く語った。

「君の気持ちは、よく分かった」

根津は、静かに言った。

「真理の親友だから、私も正直に話すよ」

根津は、鼻から息を吐くと、賢也を見つめた。

「君の思惑は、・・・恐らくかなわない」

賢也は、驚きの表情を見せ、耳を疑った。

「事件が起きなければ、警察は動けない。暴力団ってだけでは、逮捕出来ないんだよ」

「もちろん分かっています。だから、俺は、情報を提供すると言っているんです」

賢也が食い下がると根津は、言葉を遮るように手を軽く上げた。

「そうじゃないんだ。ハッキリ言うと、津嶋会が解散することを警察は、望んでいない。組織という縛りから解放された悪党は、自由になったら何をする?もっと凶悪な犯罪が多発する。そして海外から別のグループが進出することも恐れている。彼らは、ゴミだが、必要なゴミなんだよ」

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