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危険な香りに誘われて
第15章 明けない夜はない
脱力感が、賢也を襲う。こんなバカな話があるか。信じられない、賢也は被りを振った。
ショックを隠しきれない賢也を見て、根津は、身内の恥を曝すことにした。

「裏で、暴力団と取引している警察官も少なからずいるのも事実だ。そういう人間が、上層部にもいるんだよ」

情けない話だ。根津は、ため息をついた。

「君の情報を上へ話すことは、可能だが、恐らく何もしてくれない。そして、君が情報を提供したということだけは、どこからか津嶋会へ流れる。そうなれば君は、命を狙われることになる。警察の僕が、こんな事を言うのは、なんだけど。他の方法を考えるべきだ」

他の方法?
他にどんな方法があるっていうんだ?賢也は、膝の上で握っていた拳に力を入れ震わせた。

「何も出来なくて申し訳ない」

根津は、言葉を続けた。

「しかし僕個人としては、何かあったら協力を惜しまないつもりだ。事件になれば、警察として正しい対応もする」

こんなこと言いたくない。根津は、心を痛めながらも、敢えて口にした。

「厳しいことを言うようだが。身内に暴力団員がいる。それが、家族にどんな迷惑を掛けるか、君が一番よく分かっているんじゃないか?」

根津の言葉が深く賢也の胸に突き刺さる。

「賢也君、彼女が大切なら、辛い選択肢も考えることだ」

賢也は、黙って頷いた。
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