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危険な香りに誘われて
第15章 明けない夜はない
「お前は、いずれ津嶋を背負って行く男だ。逃げることは許さん」

父親を説得することは、やはり無理だったのか。それでも賢也は、諦めきれず、頼み込んだ。

「そんなもん、俺は、望んでねぇ。頼むから、俺を自由にしてくれ」

父親は、膝を立て、刀を持ちかえる。
ゴクリと唾を飲んで、賢也は、親父を真っ直ぐに睨み付けた。どうせ脅しだ。切りつけられたとしても、殺されることはないだろうと心のどこかで、高をくくった。

「やりたきゃ、やれ」

「そんなこと言っていいのか?お前の大事な女が、どうなっても知らんぞ?お前を殺した後、シャブ漬けになって津嶋の餌食になっても構わねぇんだな?」

「俺が死んだら、真紀は、もう関係ないだろ?」

「甘いんだよ。お前が、手を引くなら、お前の知り合いを皆不幸にしてやろうか?結城とやり合ってもいいぞ?もうじき、子供も生まれるそうじゃねぇか。生まれる前に死んだら、さぞかし、辛いだろうな。ま、死んだ後は、お前には関係ないか」

こんな奴から自分が生まれてきたんだと思うだけで、虫唾が走る。
この家に生まれたことが、俺の不幸だ。賢也は、眉間にシワを寄せ、俯いた。

「あんたを・・・殺して、俺も死ぬ」

賢也は、すぐ側の刀を掴むと父親に刃を向けた。



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