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危険な香りに誘われて
第2章 7年後
「ところで、真紀ちゃん。彼氏とは、まだ続いてんのか」

「えっ」

ドキリ。真紀の心臓が高鳴った。助けを求めるように千佐子に視線を送る。
それを察知した千佐子は、自分のグラスをドンっとテーブルに置いて。

「残念でした。まだ続いていますよ。だから、口説こうなんて妙な真似しないでよ」

チクリと賢也に釘を刺す。

「彼氏のことを聞いただけだろ。全く、千佐ちゃんの目が光っていると、やりにくくてしょうがねぇな」

真紀は、ホッと胸を撫で下ろした。


賢也は、特定の彼女を作らない主義だと千佐子が言っていた。
口説かれて、その気になったら最後、遊ばれて捨てられるのが落ちだ。

だったら、バリケードを張る他ない。
無視すればいいのだ。
頭では分かっている。なのに、意識は、どうしても賢也に集中してしまう。
話しかけられると、心が躍る。
船上で声を掛けてきた賢也の熱い眼差しに、胸がドキドキした。


ノンアルコールをグラスに注いで飲む賢也をチラッと盗み見する。

厳つい顔、大きな体、その存在感は、圧倒的だ。なのに、目尻にシワを寄せて笑う顔は、可愛いと思ってしまう。

自分の手に負える男じゃない。

こいつだけは、あり得ない。

私、どうかしている。



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