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危険な香りに誘われて
第15章 明けない夜はない
「社長、どうしますか?」

父親は、刃の先で賢也の喉を軽く突き刺した。血が、刃先を伝ってポタポタと落ちていく。

「いいか、何があってもお前は、オカザキを継ぐ。そして、チャンスを待って、のし上がれ」

「どうして、そうまでして俺に継がせたいんだ?」

「お前は、その為に生まれたんだ。教えてやろう。お前の親は、岡崎徹也だ。春子と親父の間に作らせた子供なんだよ」

賢也の体が、大きく揺らいだ。全身の毛が逆立ち、信じられないと顔を上げた。

「俺には、タネがねぇんだ。だから春子に親父の子を産ませた。お前は、岡崎と津嶋を守るために作ったんだ。いいか、オカザキの代表になって、実力をつけろ。そして、津嶋のトップになれ」

親父の子じゃない。それどころか、爺の子だと?
暴力団のトップにさせるために、作られた子供。

母親が、賢也を嫌っていた理由が分かった気がした。
おそらく、無理やりやられたんだ。だから、薬に逃げ、挙句自殺した。母親の無残な姿は、今も脳裏に焼きついたままで、賢也の記憶から消しさられることはない。賢也は、下唇を噛みしめた。

「あんたは、それでも血の通った人間なのかっ」

「俺は、ヤクザだ」

賢也は、畳を拳で殴りつけた。

「くそっ」
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