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危険な香りに誘われて
第16章 止まない雨はない
伊藤は、急に席を立つとベランダの方へ行く。
手を後ろで組み、窓越しに外を眺めた。
「見晴らしが、良いですね」
「はぁ?」
何で、ずっと外向いてんだろ。真紀は、顔をしかめた。伊藤がクルリと振り返る。真紀は、慌てて笑顔を作った。
「お手洗いお借りしますよ」
「えっ、はい」
「言っておきますが、勝手に私の書類を盗み見たりしないで下さいね」
何が言いたいんだ、このおじさん。伊藤は、テーブルに広げた書類を見渡すと、顔を上げた。
「本当に見ないで下さいよ」
見られたくないなら鞄にでもしまっておけよ。真紀は、ムッとした。
「見ませんから、早くトイレ行ってください」
伊藤は、長い間トイレにこもったまま出て来ない。
ふと一枚の名刺に目が止まった。
思わず手にすると、それは、㈱オカザキの名刺。しかも賢也の名前も印刷されている。
真紀は、すかさずスマホで写真を撮った。
しばらくすると伊藤が戻ってきて、テーブルの上に広げた書類を片付け始めた。
「帰るんですか」
「ええ、これ以上いても、同じことですから」
「先生、ありがとう」
「なんのことですか」
とぼける伊藤に、真紀は、微笑んだ。
「慰謝料もらって新しい生き方する方が、幸せになれると思いますよ」
「苦労しても好きな人といたいんです」
「若いな」
伊藤は、細い目を更に細めた。
手を後ろで組み、窓越しに外を眺めた。
「見晴らしが、良いですね」
「はぁ?」
何で、ずっと外向いてんだろ。真紀は、顔をしかめた。伊藤がクルリと振り返る。真紀は、慌てて笑顔を作った。
「お手洗いお借りしますよ」
「えっ、はい」
「言っておきますが、勝手に私の書類を盗み見たりしないで下さいね」
何が言いたいんだ、このおじさん。伊藤は、テーブルに広げた書類を見渡すと、顔を上げた。
「本当に見ないで下さいよ」
見られたくないなら鞄にでもしまっておけよ。真紀は、ムッとした。
「見ませんから、早くトイレ行ってください」
伊藤は、長い間トイレにこもったまま出て来ない。
ふと一枚の名刺に目が止まった。
思わず手にすると、それは、㈱オカザキの名刺。しかも賢也の名前も印刷されている。
真紀は、すかさずスマホで写真を撮った。
しばらくすると伊藤が戻ってきて、テーブルの上に広げた書類を片付け始めた。
「帰るんですか」
「ええ、これ以上いても、同じことですから」
「先生、ありがとう」
「なんのことですか」
とぼける伊藤に、真紀は、微笑んだ。
「慰謝料もらって新しい生き方する方が、幸せになれると思いますよ」
「苦労しても好きな人といたいんです」
「若いな」
伊藤は、細い目を更に細めた。