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危険な香りに誘われて
第16章 止まない雨はない
週末、賢也のノートパソコンに真紀からメールが届いた。

『今夜、平野さんと合コンパーティーいってきまーす。新しい彼が出来たら、紹介するね』

「くそっ、あのアホッ」

真紀の思惑に乗るな。賢也は、自分に言い聞かせた。しかし、激しい嫉妬心は、どうにも抑えきれない。今頃、どこで何しているのか。気を紛らわせようと、クラブで煽るように酒を飲んだ。

「賢也さん、ハイペースですね」

店の女が、空いたグラスにに手を伸ばす。

「最近、うちの坊ちゃんは、ご機嫌斜めなんだよ。慰めてやれよ、マーコ」

広川がからかう。

「そうそう。溜まってんだろ。吐きだして来いよ」

「あら、そうなの。じゃあ、お店終わったら、僕のお相手してあげようかな」

「うるせぇ、向こういけ」

賢也は、時計を何度も見ては、ため息をついた。9時か。まだ、どこかの店で楽しくやっているかもしれない。まさか、その日に知り合った男といきなりホテルなんて行かねぇよな。真紀にその気がなくても男がやる気満々だったら、どうする。
真紀は、小さくて軽い。無理やり抱えてホテルに連れ込むなんて、意図も容易いことだ。
連れ戻しに行くか。いや、しかし、そんな権利、もうねぇだろ。賢也は、歯ぎしりをしながら、探しに行きたいのを我慢した。

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