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危険な香りに誘われて
第16章 止まない雨はない
カラオケボックスの駐車場に乗り入れた途端、賢也が止めろと叫ぶ。板倉は、慌ててブレーキを踏んだ。

「賢坊、二階の右手奥の一番でっかい部屋、210号室だとよ」

ドアを勢いよく開けると賢也は、店へ向かって走って行った。

「早ぇーな」

感心したように吉田が言う。

「若いな」

広川も頷いた。

「えっ、あっ、あのっ。い、行かないんですか」

シートに背中をベッタリとくっつけて、寛ぐ広川たちを見て、板倉がオロオロしている。

「30分もすりゃ出てくんだろ」

「1発やれるな」

「相手は、真紀ちゃんだぞ。何もせんだろ」

「あほ、賢坊、1ヶ月禁欲してたんだぞ。やるに決まってる。5万賭けてもいいぞ」

「よし、乗った」

「お、俺もいいスか。キスだけに千円」

板倉が指を一本立てた。

「てめぇは、参加すんなっ」

ごんっと吉田が鉄拳を頭に落とした。

「頼みますよ」

「負けたら5万だぞ」

「えーっ」

吉田は、窓を開け、タバコに火を点けると、ふーっと鼻から煙を出した。

「ったくよ、色々やってきたくせに、うちの大将、変なところだけ真面目だよな」

「いいんじゃねぇか。俺は、結構気に入ってる」

「まぁな」
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