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危険な香りに誘われて
第17章 一場春夢
社長室の扉を開けた真正面に飾られた額。大筆で書かれた「道」の一文字が、目に飛び込んでくる。迫力のある字に圧倒され、真紀は足をすくませた。
「何をしている。さっさと入って、閉めろ」
きつい口調、真紀は、慌ててドアを閉めた。
近寄りがたい雰囲気、澱んだ空気。皇帝の頭上に黒いオーラがドロドロと渦を巻いている。地獄の門前にいるみたいだ。
「座ったらどうだ」
革張りの黒いソファへ座ると、皇帝は、真紀の前に立ちはだかった。見上げる皇帝の顔色は、血の気が無く青白い。照明のせいだろうか。
「あれと寄りを戻したらしいな」
まただ。皇帝は、賢也の名前を口にしない。自分の息子なのに。真紀は、唇を尖らせた。
「いけませんか」
「あれは、相当お前に溺れているようだな。あれほど、嫌っていた私の稼業も継ごうというのだから。お前は、本当に役に立ってくれたよ」
皇帝は、口角を上げると、指先で真紀の頬に触れた。
冷たい指先。真紀は、ひっと声を漏らした。黒いオーラを纏った皇帝に睨まれると、まるで金縛りに遭ったように身体が動かない。
呑まれてしまう。
賢也、助けて。
「あれを溺れさせた、この体、よほど良いものをもっているのか。試してみたいものだ」
「あ・・・・あれじゃありません」
震えてはいたが、声が出た。真紀は皇帝の手を払いのけるとキッと睨みつけた。
「自分の息子でしょう。賢也って、ちゃんと呼んでください」
皇帝の眉がピクリとする。
「何をしている。さっさと入って、閉めろ」
きつい口調、真紀は、慌ててドアを閉めた。
近寄りがたい雰囲気、澱んだ空気。皇帝の頭上に黒いオーラがドロドロと渦を巻いている。地獄の門前にいるみたいだ。
「座ったらどうだ」
革張りの黒いソファへ座ると、皇帝は、真紀の前に立ちはだかった。見上げる皇帝の顔色は、血の気が無く青白い。照明のせいだろうか。
「あれと寄りを戻したらしいな」
まただ。皇帝は、賢也の名前を口にしない。自分の息子なのに。真紀は、唇を尖らせた。
「いけませんか」
「あれは、相当お前に溺れているようだな。あれほど、嫌っていた私の稼業も継ごうというのだから。お前は、本当に役に立ってくれたよ」
皇帝は、口角を上げると、指先で真紀の頬に触れた。
冷たい指先。真紀は、ひっと声を漏らした。黒いオーラを纏った皇帝に睨まれると、まるで金縛りに遭ったように身体が動かない。
呑まれてしまう。
賢也、助けて。
「あれを溺れさせた、この体、よほど良いものをもっているのか。試してみたいものだ」
「あ・・・・あれじゃありません」
震えてはいたが、声が出た。真紀は皇帝の手を払いのけるとキッと睨みつけた。
「自分の息子でしょう。賢也って、ちゃんと呼んでください」
皇帝の眉がピクリとする。