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危険な香りに誘われて
第17章 一場春夢
賢也は、一瞬考えた。真紀に漏らしていい情報かどうか。真紀は、オカザキの社員。だが、他の社員に情報を漏らすとは思えない。
「今、役員変更の手続きをしようとしているんだ」
「それって、賢也が代表になるってこと?」
「ああ。でも、問題は、別だ。重役が、えらく騒いでて、津嶋の最高幹部まで出てきやがった」
これまで、何も教えようとせず、ただ隠そうとする賢也が、今、会社のことを話してくれている。それは、真紀にとって、驚きでもあった。だが、目の前にいる賢也は、まるで知らない男のようだと思えるほど、無表情。何の感情も見えない。側にいても、賢也が、自分と別の世界に生きている気がしてならない。真紀の不安がまた大きくなり、ギュッと賢也にしがみついた。
「親父の嫁が、取締相談役になるってことで、もめてんだよ」
賢也の実家にいた冷たい表情の女の顔が頭に浮かぶ。女帝が、役員に。
「どうして問題なの?」
大手企業ならまだしも中小企業が、同族会社なんて当たり前なのに。真紀は、首を傾げた。
「女が、組織に口出すことになるんだからな、そりゃもめるだろ」
「意味が分かんない。世の中、役職持った女性は、いっぱいいるよ」
「今、役員変更の手続きをしようとしているんだ」
「それって、賢也が代表になるってこと?」
「ああ。でも、問題は、別だ。重役が、えらく騒いでて、津嶋の最高幹部まで出てきやがった」
これまで、何も教えようとせず、ただ隠そうとする賢也が、今、会社のことを話してくれている。それは、真紀にとって、驚きでもあった。だが、目の前にいる賢也は、まるで知らない男のようだと思えるほど、無表情。何の感情も見えない。側にいても、賢也が、自分と別の世界に生きている気がしてならない。真紀の不安がまた大きくなり、ギュッと賢也にしがみついた。
「親父の嫁が、取締相談役になるってことで、もめてんだよ」
賢也の実家にいた冷たい表情の女の顔が頭に浮かぶ。女帝が、役員に。
「どうして問題なの?」
大手企業ならまだしも中小企業が、同族会社なんて当たり前なのに。真紀は、首を傾げた。
「女が、組織に口出すことになるんだからな、そりゃもめるだろ」
「意味が分かんない。世の中、役職持った女性は、いっぱいいるよ」