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危険な香りに誘われて
第17章 一場春夢
「賢也、お父さんのことは、このままでいいの?もし大変な病気だったら、検査とかしてもらった方が」

心配する真紀の気持ちを追い払うように、賢也は掌をヒラヒラさせた。

「ほっとけよ。親父も今、病気だって知られたくないんだろ」

「でも、何の病気か」

「持病って言ったんだろ。多分、肝炎が進行したんじゃないか?」

「肝炎」

「ウイルス性のな。なりやすいんだよ。原因は、刺青入れる時の針とか覚せい剤を打つ注射針」

「肝炎が進行したら、どうなるの?」

「肝硬変とか肝癌。痛みがあるってなら、かなり進行してんのかも」

どうして、自分の親なのに、そんな他人事みたいに言うんだろう。
父親に対して、憎しみや恨みという感情すら持ってない、死のうが、どうなろうが、どうでもいい存在としか思っていない。そんな風にもとれる。
互いに思いやることの無い親子。なんだか切ない。

「詳しいんだね」

「爺が、それで死んだからな」

「お爺ちゃんも。・・・冷たいよ、賢也」

「自業自得だろ」

そんな簡単な一言で済ましてしまうなんて。賢也が、育った環境は、それほど厳しかったのかもしれない。真紀は、悲しくなった。

「賢也は、刺青入れたりしないよね?」

「しねぇよ」

「良かった」

真紀は、ほっと胸を撫で下ろした。


賢也は、放っておけと言うが、真紀は、皇帝の病気が気になった。痛みに苦しむ皇帝の顔が忘れられない。
末期の肝癌。
もし、本当なら、早く病院に行った方が良いんじゃないの?

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