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危険な香りに誘われて
第17章 一場春夢
バスタオルを数枚手に戻ってきた賢也は、ギョッとした。
テーブルの上で、真紀が、グズグズと鼻をすすって泣いている。

「どうした」

「うわーんっ。なんで、置いて行ったんだよーっ」

アイマスクの横から涙が流れている。賢也は、慌ててマスクを外した。

「なんだよ、ちょっとタオル取りに行っただけだろ」

「うーっ、賢也のあほっ、もうやだっ、こんなのやだっ」

怒った顔で、泣きじゃくる真紀を見て、賢也は、胸に痛みを感じた。
ネクタイを解き、体の下に腕を入れ、起こしてやると、肩にバスタオルを掛けてやった。
グズグズ泣く真紀の顔を胸に押しつけるように抱き締めた。

「泣くなって」

「あぐっ、うぐっ。何も見えないし、動けないし、一人にされて怖かった」

「悪かった、悪かったから、泣きやんでくれ」

賢也は、真紀を抱きあげると、子供をあやすように揺すった。
片腕で真紀を抱いたまま、ベランダ戸を閉めると、軽く唇にキスをした。

「続きは、ベッドにしよう」

「こんなプレイは無しだからね」

「ああ、分かった。目隠しは、もう二度としねぇよ」

「テーブルに繋ぐのもなし」

「分かった、分かった」

「賢也って、変態なの?今までも、こんなプレイしてたの」

「したことねーわっ。変態って言うなっ」

賢也の首に腕を回し、広い肩に頬を乗せた。

「ちょっぴり変態なのは、いいけど。ガッツリ変態は、やめてよね」

「難しい注文だな」

「今度は、私が賢也を苛める番だからね」

「楽しみだ」

賢也は、笑って寝室のドアを閉めた。

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