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第20章 雷雲に消える昇竜

車の助手席には、広川が乗っている。
吉田が、運転席に乗り込むと、広川は、窓の方へ顔を背けた。

「いい加減にしろよ、広」

「うっせぇ。お前の説教なんか聞きたくもねぇ」

広川の鼻を啜る音を聞きながら火葬場まで、行くこととなった。

「後悔するから言ってんだ。ほら、いいから、降りろ」

吉田が、嫌がる広川を無理やり火葬場の建物の中へ連れて行く。

真紀は、葬儀を見て、ずっと不思議に思っていた。皇帝は、冷酷と言っても過言ではないほど、冷たい態度で賢也に接していた。
なのに、別れを惜しむ男たちを見ると、明らかに皇帝を慕っているとしか思えない。
そして、広川も葬儀に出ないの一点張で、一人車の中で皇帝の死を嘆き悲しんでいた。



「ここで最後のお別れとなります。皆様、宜しいでしょうか」

女帝が「お疲れ様でした」と小さな声で囁いた。

「では、皆様合掌下さい」

賢也が、小さく息を吐き、扉の横にある点火ボタンを押す。
その瞬間、女帝が、小さく息を吸って自分の口に白いハンカチを当てた。

「うおおおおーっ」

広川が、天井を仰ぎ、雄叫びを上げたのを合図に。

「社長ーっ」

「兄貴ーっ」

火葬場で悲しむ男たちの声が響き渡った。