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危険な香りに誘われて
第20章 雷雲に消える昇竜
「あんたが、賢也の婚約者か」

「・・・はい」

真紀が、返事をすると、ちょい悪親父が、うんうんと頷く。

「孝也は、あんたをいたく気に入っておった」

孝也?真紀は、目をパチクリさせた。

「えっ、それは無いですよ。嫌われていましたから。会社で顔を合わせても、無視されるか、嫌なことしか言われていないのに」

口を尖らせて言う真紀を見て、ちょい悪親父が、軽く笑う。

「賢也の女は、生意気だ。この俺を睨みつけてきやがる、孝也が、眉間にシワを寄せて言うとった」

それのどこが、気に入ってたことになるんだ?真紀は、眉根を寄せ首を横に小さく振った。
ちょい悪親父が口角を上げ、意味深な笑みを見せる。

「人間、見せている部分だけが、全てではない。特に、孝也の場合はな」

「はぁ・・・・」

「照れ屋なんだよ。もしかしたら、ちょっとばかし、あんたに惚れとったのかもしれんな」

ちょい悪親父は、ハハハと声を出して笑った。真紀は、ブンブンと首を横に振って否定する。気に入られているはずがない。天地がひっくり返ってもあり得ない。

「組長、面白い話をしていますね」

頭の上から低い声が聞こえ、真紀は小さく飛びあがった。掴まれた肩が、痛い。

「何、気にするな。親父の戯言よ」
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