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危険な香りに誘われて
第21章 番犬注意
普通、人が殺されたらテレビで報道されるはずだ。原田の話は、本当だろうか。だが、嘘をついているとも思えない。真紀は、原田を見据えた。

「じゃあ、何で新聞にもニュースにもならないんですか?」

疑問をぶつけると、原田は、両掌を天井に向け、肩を竦ませた。

「隠している事情までは、分からないよ。それより俺は、あいつと一緒にいたら、真紀ちゃんまで、危ない目に合うんじゃないかって、それを心配しているんだ。悪いことは言わない。岡崎賢也と早く別れた方が良い」

「原田さん、私は、賢也と別れるつもりは」

「岡崎賢也は、ヤクザだ。ヤクザは、女を食い物にする。金を稼ぐ為の道具としか見ていない」

「そんなこと無いです。他の人は、どうか知りませんが、賢也は違います」

ヤクザのイメージを頭に思い浮かべると、原田の言葉は、納得出来る。だが、賢也は、自分の世界を見せようとしない。むしろ遠ざけようとしている。疎外感と不安は付き纏うが、それは賢也が、私を守ろうとしているからだ。そんな賢也が、私を食い物にするはずがない。
真紀は、首を横に振って原田の言葉を否定した。

原田は、目をぐるりと回した。そして、何も分かっていないと、気の毒そうに真紀を見た。

「皆、自分だけは、違う、大事にしてもらっているって勘違いする。俺の妹もね、そう思っていた。家族皆が、どんなに説得しても聞き入れようとしない。気づいた時には、遅かった。妹は、覚せい剤と男の暴力と性的暴行を受け、見るも無残な姿で警察に保護されたよ」
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