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危険な香りに誘われて
第23章 奪還
玄関の外に番犬が居なかった?尋ねると、板倉は、誰もいませんでしたよ、そう答えた。

「板倉さんが、帰ってきたから、もう必要ないと思ったのね」

「外に見張りが、いたんですか?」

「そうなの。賢也の、お父さんが亡くなって」

「賢さんから聞きました。大変でしたね」

板倉とキッチンで会話をしながら真紀は、珈琲メーカーを用意し、冷凍庫から豆を出した。

「それで、私に相談って?」

「あ、俺やりますよ。真紀ちゃん、座っていて」

「でも」

「珈琲メーカーなくても美味しい珈琲入れてあげるから、真紀ちゃんは、リビングで寛いでいてよ」

板倉の入れた珈琲を飲み、リビングで向かい合って話をした。そこまでは、覚えている。
板倉の相談は、確か、時々田舎に行って、母親の様子を見たいとか、そんな内容だった。
しかし、後の記憶が全くない。

「珈琲に何か入れたの?」

「妹が病院で処方してもらっていた睡眠導入剤だよ」

眠らされ、車に連れ込まれたのか。しかも身動きとれないように手と足には、ビニールテープが巻きつけられている。

「どうして、こんなとするの?」

「真紀ちゃんを誘拐するためさ」

「ゆ、誘拐?」

「玄関の前にいた男みたいにスタンガン当てるのは、可哀想だろ?これでも一応気を遣ってあげたんだよ」

「はぁーっ?何言ってんの?こんな真似しておいて、どこが気を遣ってるって言うのよ。ふざけんなっ」

運転席の男に噛みつくように真紀は、声を張り上げた。
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