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危険な香りに誘われて
第23章 奪還
大切な人を失ったら、きっと悲しくて、辛くて、生きている意味すら無くしたように思うだろう。もし、賢也が殺されたら、殺した相手を恨むに違いない。
殺してやりたいと思うかもしれない。
それでも、激情のまま行動に移していい理由にはならない。
なんの為に警察が、法があるのか。

「だからって、殺すなんて、間違ってる。そんな事しても妹さんは、帰ってこないのに」

ドンッ。原田は、窓を叩いた。

「黙れっ。君に言われなくても、そんなことは、分かっている」

「警察に相談するとか、他に方法が」

「南条の家族を殺した犯人すら、捕まえることも出来ない警察が、何をしてくれる?」

「妹さんは、原田さんに復讐してもらおうなんて、そんなこと望んでいないはずだよ」

「随分ご立派な意見だな。じゃあ、見張りをつけるほど、大事にしている君が死んだら岡崎賢也は、どうするかな?復讐する相手も死んでいなかったら、自分の所為だと、一生自分を責めるかもしれないな」

声は笑っているが、表情は明らかに腹を立てている。真紀は、背筋が寒くなった。

これは、現実なのだろうか。
夢なら覚めてほしい。真紀は、板倉に顔を向けた。

「板倉さんも同じなの?賢也を苦しめたいの?」

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