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危険な香りに誘われて
第23章 奪還
ひゅーっ。薄らと開く唇から空気を吸いこむ音が漏れた。

「け・・・・ん・・・や」

安堵する男の目尻に涙が滲んでいる。

「真紀。・・・・・良かった」

瞬きを何度もする真紀を見て、賢也は、思わず愛らしい唇に自分の唇を重ねた。
真紀は、驚き、体を硬くさせ、力の無い腕で逞しい胸を軽く叩く。

「やめ・・・・・・ん」

強引に唇を離し、文句を言いかけたが、再び唇は賢也のキスに塞がれてしまった。

「皆が見ているよ」

「誰も気にしてねぇって」

賢也が、邪魔するなと、広川たちに視線を送る。
広川たちは飽きれた顔で互いを見、二人に背を向けた。

「な」

「賢也のあほ」

賢也は、笑って真紀の下唇を軽く噛んだ。
恥ずかしさのあまり、賢也に抱きつき、逞しい胸に頬を押し付けた。
もうダメだと、一度は諦めた。二度と賢也の温もりを肌で感じることは無いと思った。
生きている。生きて、賢也の腕に抱かれている。
それが、どんなに幸せなことか、改めて実感した。

「助けに来てくれて、ありがとう」

「俺の寿命、十年は、縮んだぞ」

「心配かけて、ごめんね」

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