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危険な香りに誘われて
第25章 愛妻家
耕太を追い出し、真紀を抱きよせると疑いの眼差しを向ける真紀の頬を優しく撫でた。

「真紀、落ち着け、俺も耕太も、そんな趣味は、ねえって」

「惚れたなんて、言われて賢也、嬉しくて、側に置いているの?」

「はぁ?」

カリカリと頭をかいて賢也は、困った顔で真紀を見下ろした。妻の言動は、明らかにおかしい。

「いったい、どうしたんだ?」

「賢也、私だけだよね?」

「何言ってんだ、分かってんだろ。お前が何を心配してんのか、全く理解出来ねぇんだけど」

「だって」

勢いで、口にしそうになった言葉を飲み込む。
前の男と別れた原因は、他に本命の恋人がいたとしか言っていない。
その相手が男だということは、秘密にしていた。

「俺に隠し事すんなよ」

「カッコ悪くて言えない」

「真紀」

賢也に低い声で名前を呼ばれると、ドキッとする。躊躇いつつも口を開く。

「前の彼氏の本命って・・・・男だったの」

賢也は、ぶはっと吹き出した。まさか、ゲイと付き合っていたとは、予測していなかった。

「わ、笑ったね。酷いっ」

真紀が怒りだし、賢也の腹をグーでパンチする。

「いや、悪い、悪い。怒んなって。お前が心配することはなんもないぞ。俺は、男に興味ねぇって。耕太も同じだ。お前の勘違いだって」

賢也は、笑いながら腹を摩った。

「勘違い?本当?」

「ああ、俺が男に興味持つわけねぇだろ。ケツの穴だって真紀にしか触らせたことねぇぞ」

言われてみれば確かに。
真紀は、足元を見つめた。足の裏がひんやりする。ようやく冷静になると、大人気なく、素足で土間に降り立ってしまった自分の行動が途端に恥ずかしくなった。

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