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危険な香りに誘われて
第25章 愛妻家
賢也も席へ着こうとした時。

「賢也」

誰かが、自分を呼んだ。誰だ、気安く呼びやがって。振り向くと、堀田総一郎だった。父親とさほど変わりない年齢で、津嶋会の若頭を務め、次期組長の座に最も近い男でもある。

「若がし」

途端に、緊張感が走る。広川も吉田も背筋をしゃんとし、頭を深く下げ、挨拶する。その様子を見て耕太も慌てて頭を下げた。
賢也は、堀田の側へ行き、会釈した。

「お疲れ様です。気がつかなくて申し訳ありません」

「ああ、気を遣うな。俺は、もう帰るところだ」

堀田と同席する男が賢也を威嚇するような目で睨みつけている。賢也は、敢えて挨拶しなかった。

「もうお帰り?」

ママが残念そうに声を掛けると堀田は、また来ると手を上げた。
腰を上げた堀田は、すれ違いざま、賢也の肩を叩き。

「例の件、考えとけよ」

耳打ちし、組員を引き連れ、出て行った。

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