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危険な香りに誘われて
第25章 愛妻家
何で、こいつがここにいる。賢也は、眉間に皺を寄せ、カウンターの中にいる女を睨みつけた。女は、全く気にもせず、愛想よく手を振り続けている。
賢也は、カウンターの前へ行き、一眼レフを取り上げた。

「こんなところで何しているんだ」

「私、先生のストーカーだよ。先生この店、よく出入りしているでしょう。バイトしていたら会えるかなって」

加賀は、肩をすくめ、ふふっと笑った。賢也は、片側の眉を下げ、頬をヒクヒク引き吊らせた。

「ストーカーだと?」

「私のコレクション見ます?」

「なっ」

いつの間に撮られたのか、カメラには、賢也の横顔や、後ろ姿の画像が何十枚も。しかも最近と思われるものばかり。恐らく他にもあるはずだ。賢也は、手を震わせた。

「かっ、加賀、てめぇっ」

「二人は知り合いなの?」

ママが二人の間に顔を割り込ませた。賢也は、カメラを落とした。慌てて耕太が、床下の手前でキャッチ。

「壊れちゃいますよ。はい、どうぞ」

カメラが、加賀の手に戻る。賢也は、耕太の頭を平手で叩いた。

「何拾ってんだっ」

「だって、高いんでしょう」

加賀は、カメラに頬ずりとキスをした。

「そうなのよ、ありがとう」

「で、二人の関係は?」

「塾の元生徒だよ。それだけだ」

賢也は、ギリギリと奥歯を噛みしめ、加賀に背を向けるとテーフル席へ座った。腕を組み、面白くないとばかりにふてくされている。

「賢坊のストーカーね」

見た目は、悪く無い。スレンダーだが、胸もある。セックスする相手としては十分だ。広川たちは、ニヤニヤして加賀を眺めた。

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