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危険な香りに誘われて
第26章 嵐
「観音像欲しさに一家を殺害したって噂もある」

「あり得ませんな。盗まれた観音像の一体、あれは、亡くなった奥さんを供養するために岡崎さん自身がこの寺に預けた物ですよ。彼が、返して欲しいと言えば、いつだって、戻ってくる。その観音像を盗むなんて、そんな馬鹿なこと」

吉田は、ざらついた顎に手を滑らせた。瓢箪から駒だな。こいつは、意外と早く大阪に戻れるかもしれないぞ。

「あんたに聞いても分からないかもしれねぇが、昔、この辺りで、女子高校生を狙った暴行事件があったなんて話、聞いたことねぇか?」

「暴行事件・・・さあ、そんな話、住民から聞いたことは・・・・」

住職は、湯呑を手にとると、顔を上げた。

「ひょっとして、博人が、犯人逮捕に協力したあれのことですか?」

「詳しく聞かせてくれ」

「相当昔の話ですよ」

間違いねぇ、それだ。吉田は、湯呑を脇へのけると身を乗り出した。


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