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危険な香りに誘われて
第26章 嵐
賢也は、腕を組み革張りの椅子に背中を預けた。
後ろから広川たちが、パソコンの画面をのぞき込む。

「根津の情報は確かなのか」

「警察のデータですよ」

賢也が鼻で笑う。
堀田と芦谷の犯罪歴が知りたい。根津に相談すると、閲覧情報をそのままUSBにコピーすることは出来ないが、写真なら撮ってやると引き受けてくれた。
しかもご丁寧に根津がインプットした犯罪歴のメモもある。

「裏付けが必要ですね」

口元に手を置き、賢也は、じっと画面を見つめた。

「なんでだ、これで十分だろ。証拠は、揃った。早く、親父に報告して」

賢也は、手を軽く上げ、広川の言葉を中断させる。

「これでは、まだ足らない。もっと、確実に追い詰める情報が欲しい。正木のことも含めて、徹底的に調べてください」

「ところで、賢坊。例の話は、どうするんだ?」

タバコに火を点けながら訪ねる吉田に、賢也は視線を向けた。

「まさか、断るつもりじゃないだろうな」

まだ二人には、言っていないが、全てが片付いたら、自分は、この世界から身を引くつもりでいる。
賢也は、黙ってUSBを抜いた。そして引き出しに入れると、鍵を掛けた。

「本部に呼ばれているので、出かけてきます」

「俺たちに、教えねぇつもりか」

「もったいねぇ話だぞ。他の奴らなら、喜んで飛びつく話なのに、何を迷っているんだよ」

「情報収集お願いします」

「おい、賢坊っ」

二人の男を残し、賢也は、社長室を出て行った。

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