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危険な香りに誘われて
第27章 終止符
翌週、トイレの中で真紀は、喜びの悲鳴を上げ、急いで寝室に戻った。
ベッドに飛び乗り賢也に跨り、妊娠検査薬を目の前に突きつける。

何事かと賢也は、目をぱちくりさせ、すぐ目の前にある検査薬を手に取った。小さな窓に陽性のラインがくっきり。

「出来たみたい」

「そうか」

「病院、一緒に行ってね」

「ああ、もちろん」

賢也は、腕を伸ばし、妊娠を喜ぶ妻を抱き寄せた。
妻は、妊娠を待ち望んでいた。

「賢也、嬉しい?」

「ああ、嬉しいよ」

避妊せず毎日セックスしていれば、いつ出来てもおかしくない。頭では、分かっていた。
子供ができる。父親になる。嬉しさと入り混じって自分の幼少の辛い経験が、走馬灯のように頭の中で駆け巡り、複雑な思いに顔をしかめてしまう。

真紀の肩に顎を乗せ、賢也は、目を閉じた。

二人の間に生まれてくる子供には、自分と同じ思いをさせたくない。
同じ経験をさせるわけにはいかない。


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