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危険な香りに誘われて
第27章 終止符
数日後、賢也たちは、広川の経営するクラブに堀田を誘い出した。
店は、改装し、高級クラブに様変わりしている。新しいママとなった広川の内縁の妻、裕美の趣向だ。
どこで知り合ったのか、首を傾げたくなるほどの妖艶の美を醸し出す裕美に、耕太は、見惚れ鼻の下を伸ばしている。

「相変わらず裕美は、美人だな」

堀田は、裕美の手を握り、自分の唇へと引き寄せる。

「若がしに褒められると嘘でも嬉しいわ」

裕美は、にっこりと微笑み堀田の口づけを手の甲で受け止めた。
広川は、それを見て頬を引きつらせ、仏頂面でウイスキーを口にする。この男でもヤキモチを焼くことがあるんだな。賢也は、面白いものを見たような気がして、思わず笑いそうになるのをぐっと堪えた。

「裕美、今夜一発どうだ。広川より、満足させてやるぞ」

「ふふふ、どうしようかしら」

頬に手を置き、悩むそぶりを見せ、裕美は、広川に流し目を送る。目が合った広川は、ごほっと咳払いした。

「若がし、女房口説くのは、勘弁してくださいよ」

広川は、敢えて女房と言った。逆らえない相手に向かって、自分の嫁だから手を出すなと主張したのだ。

「だったら、てめぇが、代わりにケツ差し出すか?」

堀田の隣にいる芦谷が、馬鹿にしたように笑う。かちんときた広川が、立ち上がり、芦谷の胸ぐらをつかみ揺すった。

「てめぇ、誰に言ってやがるっ」

「てめぇこそ、誰にもの言ってると思ってんだっ」

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