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危険な香りに誘われて
第27章 終止符
互いの胸ぐらをつかみ、顔を近づけ睨み合う。見た感じ、恰幅のいい広川が優勢に見える。たが、芦谷も決して引こうとはしない。若頭を前に醜態を晒すわけにはいかないのだ。

まるで余興を楽しむように堀田は、目を輝かせている。どうやら止めるつもりは無いらしい。賢也は、仕方なく立ち上がった。

「二人とも、座ってください」

賢也が、仲裁に入ると広川は、しぶしぶ芦谷を突き放した。
二人は、乱れたスーツを直すと睨み合ったまま腰を下ろす。

「ところで、賢也。そろそろ本題に入ろうか」

「そうでしたね」

以前から、堀田は、自分の経営する生コンの会社に投資の話を、賢也に持ち掛けていた。
売り上げは悪くないが、手形を割ったり回したりの自転車操業で資金繰りに苦しんでいる。経営破たん寸前まで追い込まれ、いつ潰れてもおかしくない状況。
賢也は、グラスをテーブルに置き、堀田に顔を向けた。

「使途不明金が気になりますね。いったい何に使ったんですか」

会議費、接待費もかなり目立つが、何より使途不明金が引っ掛かった。

「ああ、うちの経理が使いこんじまったんだよ」

「一億も経理が使いこみ?」

「まぁ、幾らかは、俺の小遣いが足りなくなったときに、ちょこっとな。オカザキが投資してくれたら、経営は、持ち直す。三期分の決算書と裏帳簿も見せたんだ。約束通り、投資してくれるんだろう」

賢也は、軽くため息をつき、決算書のコピーを堀田の前に投げ捨てた。

「使途不明金の使い道、俺なりに調べさせてもらいましたよ」

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