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危険な香りに誘われて
第27章 終止符
広川が、目配りすると裕美は、席を立ち、若頭に会釈し、奥のテーブル席へ移動した。
賢也は、胸ポケットから折りたたんだ小さな紙をテーブルに置き、堀田の顔をのぞく。

「三十年ほど前、山口の田舎で女子高校生を狙った暴行事件が起きていた。殆どの高校生は、泣き寝入り。その犯行グループが逮捕された時の記事ですよ」

堀田は、記事を見て、渋い顔をする。そして腕を広げるとソファの背もたれの上に乗せ、平然とした態度を装う。

「その事と、使途不明金。どう繋がるんだ?」

「犯行グループは、暴走族。主犯格とされる少年Aは、リーダー久保田です。暴行しているところを誰かに見られ、通報され、少年たちは、現行犯逮捕。リーダーを含め、関係者は、全員少年院へ送り込まれた」

「何が言いたいのか、さっぱり分からねぇな」

堀田は、記事をつまむと床へ捨てた。記事は、ひらひらと舞い、賢也の足元へ落ちる。

「久保田の母親は、事件を苦に自殺しました。唯一の身内を亡くした久保田は、少年院出所後、大阪へ上京。そのまま部屋住みとして堂本組に身を置いた。そして、数年後、当時の組長に気に入られ、組長の娘、堀田千鶴と結婚した」

一呼吸し、賢也は、堀田を見据え。

「久保田とは、あなたのこと。そうですよね、若がし」

堀田は、鼻で笑った。

「三十年も前の昔話を掘り起こされるとはな」

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