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危険な香りに誘われて
第27章 終止符
「広川たちには、もう話したのか」

「はい。今朝」

「そうか」

賢也は、チラッと時計を気にする。

「じゃあ、家族が待っているんで、そろそろ失礼します」

組長に向かって一礼する。

「あいつらに挨拶せんのか」

片付けをする三人に目を向け、賢也は、小さく首を横に振った。

「元気でな」

「組長も」

賢也が店を出ていく。思わず追いかけそうになった耕太の腕を広川がつかみ、引き留めた。

「黙って行かせてやれ」

「でも俺、賢也さんと別れたくないっス。広川さんたちは、いいんですか」

半泣きの耕太を見て、吉田が笑って頭をはたいた。

「あほ、俺らも寂しいに決まってんだろ」

「うーっ、賢也さん」

「男のくせに泣くやつがあるか」

振り向きもせず、出て行く男の背中を広川と吉田は、黙って見送る。
心の中で別れを呟いた。


じゃあな、賢坊。

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