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危険な香りに誘われて
第4章 捕獲
嘘でしょう。帰る部屋もないのに、そんなこと言う?

「信じられない」

「どうとでも言え」

「鬼っ、悪魔っ、野獣っ、この最低男」

真紀は、泣きたくなった。

「騙すなんて、酷いよ。何考えてんのよ」

涙を浮かべる真紀を見て、賢也の心が激しく動揺した。女の涙を見ても心を動かされたことなど、一度もなかったのに。真紀の泣きそうな顔を見るだけで、胸が痛くなる。
賢也は、居ても立っても居られず、真紀をギュッと抱き締めた。

「ちょっと、何すんのっ」

真紀は、もがいた。賢也の腕は、まるで鋼鉄。がっしりと拘束され、全く身動きがとれない。硬い胸に押しつぶされそう。

「・・・苦しいよ」

「俺と一緒にいるの嫌か?」

寂しそうな声で、ボソッと言われ、胸の奥が締めつけられたような痛みを感じてしまう。

「オカケンさん」

「合縁奇縁って知ってるか?」

「あ・・・あいえん・・・きえん?」

愛煙消えん?

「タバコ吸う人のこと?」

「・・・・辞書で調べろ」

馬鹿にされたような気がして、真紀は賢也の脇腹をつねった。

「痛っ」

脇腹を摩りながら賢也は、真紀を鋭い目で見下ろした。本気で睨んでいる訳ではないが、真紀を脅すには、十分だった。

「な、何」

「飼い主をひっかくような子猫には、躾が必要らしいな」

賢也は、不敵な笑みを浮かべた。



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