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危険な香りに誘われて
第28章 桜
寝室へ行き、カメラを手にすると、洗車している白鳥にシャッターを押してもらうように頼んだ。

「賢也様が、桜の下で写真を撮るとおっしゃったんですか?」

白鳥は、窓を拭く手を止め、怪訝な顔をする。

「私が誘ったんだけど」

「撮るとおっしゃったんですね?」

「えっ」

白鳥は、何か言いたげな顔をしていたが、言葉を飲み込み、濡れたタオルをバケツに引っかけた。

「承知致しました」

庭へ行くと優也を抱いた賢也が、少し離れたところから満開の桜をじっと眺めている。
ひらひらとピンクの花びらが舞っている中、険しい顔で桜の木を睨みつけて。

まるで、そこに結界でもあるかのように、賢也は、それ以上足を踏み入れようとしない。
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