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危険な香りに誘われて
第5章 虎の真紀
仕事が手もつかないほど、賢也とするであろうセックスの事ばかり考えていた。
ピルって、避妊薬だよね。
あれって、すぐ飲んで効き目があるのかな。
下着は、どうしよう。勝負下着は、こっちもやる気満々みたいで、そう思われるのは、癪に障る。
だからといって、履き古したショーツもみっともない。
シルクの白い下着、あれなんかどうだろう。
それともフリフリピンクの・・・。

「ねぇ、カレーうどんの汁飛んだよ?」

ストールを指差す同僚の郁美の声にハッとした。

「うわっ、やばっ」

3カ所ほど、黄色い点々が飛んでいる。真紀は、慌ててストールに手を掛けた。
会社の社内販売で買ったとはいえ、結構お気に入りだったのに。

スルリと首から外し、汚れた箇所を確かめていると。

「何、それ。どしたの」

郁美の視線の先には、賢也の所有の証。

「うわっ」

真紀は、慌てふためいてストールをグルグル首に巻いた。心臓がバクバクする。

「彼氏と別れたって言ってなかった?まさか自棄になって、そこらの男と」

淡泊な彼氏と別れた反動で、見ず知らずの男と一夜の情事を楽しんでいるんじゃないよね。どちらかと言えば、下ネタには、参加したがらない、奥手なタイプ。その真紀が、首にキスマークをつけて出社するなんて、考えられない。
郁美は、真紀の身を案じた。

真紀は、顔を真っ赤にさせて首を横に激しく振る。

「そうじゃないのっ。これは、あいつが」

「しっ、声がデカい」

郁美は、唇に人差し指を立てた。

「話は、仕事が終わってから聞く」

「話なんて」

「あるでしょう。私に話すこと。それとか」

郁美は、キスマークがついていた辺りに指を差した。
観念しなさいと言わんばかりの目。

真紀は、ふぅっと小さなため息を漏らす。

「分かった」
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