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危険な香りに誘われて
第5章 虎の真紀
「だって、騙したんだよ。格安で2LDKのマンションに住まわせてくれるって言うから引越したのに、実は、あいつの部屋だったの。特定の女を作らず、遊びまくっていた男が、私に本気だって言うの。信じられる?半端なく遊んでいる男だよ」

興奮気味に喋って喉が枯れた。真紀は、息をつくとグラスを手にとって一気にコーヒーを飲む。

「その人、真紀を独占したいんだね。じゃなきゃ、無理やり一緒に住まわせたり、キスマークつけたりしないよ。どうでもいい女なら、外でやればいいし」

独占したい?真紀は、眉間にシワを寄せた。
理由が思い当たらない。
実は、自分が知らないだけで、どこかのご令嬢で、あいつがそれを嗅ぎつけて、丸め込もうとしているとか?
そんな分けないか。
実家は、普通の畳屋だし。どう考えても私は、あの二人の娘だわ。

「分かんない。でもアイエンキエンだから諦めろって」

「合縁奇縁?へぇ、そんな言葉使う人なんだ」

「そうだ、辞書で調べろと言われていたんだ」

真紀は、スマホを手に取った。


【合縁奇縁】

不思議なめぐり合わせの縁。
人と人とが互いに気心が合うかどうかは、みな因縁という不思議な力によるもの。
特に男女の間柄についていう。


真紀は、被りを振った。

「意味が分からない」

「何で?意味、書いてあったんでしょう」

賢也が、何を言いたいのか、全く分からない。
いったいどこが、不思議な巡り合わせなのか。
お互いの友人が結婚したから顔見知りになっただけなのに。
あいつ、本当に塾の先生か?

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