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危険な香りに誘われて
第5章 虎の真紀
ベッドが揺れたせいか、ペットボトルが、賢也の太腿に転がってきた。
手に取り、パキッと小気味良い音をさせてキャップを開けたボトルを賢也は、自分の口元へ運びゴクッゴクッと水を流し込む。
賢也の喉仏が大きく動く様を真紀は、間近で見ていた。

「飲むか?」

「うん」

手を伸ばすと賢也がペットボトルを遠ざけたので、真紀は、ムッとした。

「ちょっと」

「飲ませてって、言ってみな」

「飲ませてよ」

賢也は、ふっと息をこぼすように笑い、水を口に含んだ。
唇を重ね、真紀の口の中へ水を流しこむ。コクッと飲むと、賢也は、また水を含み真紀へ口移しで与えた。

真紀が、もういいと言うと、賢也は残りを一気に飲み干しベッドの下に置いた籐籠のゴミ箱へ空のペットボトルを放り込んだ。

真紀の口端が、濡れている。賢也は、親指で拭ってやった。

「賢也。怒ってない?」

「何を」

「出来なくなっちゃったから」

引っ掛けた女が、ホテルに入った途端、生理になったのとは、状況が違う。
例え相手が、真紀だったとしても、一夜限りなら、がっかりしたかもしれない。
だが、真紀は、もう自分のもの。これから好きなだけ抱ける。
それに、これは毎月、訪れること。

「怒るようなことじゃねぇだろ」

「だって・・・・」

「俺は、可愛い口で抜いてもらったし。それより、真紀の方が、欲求不満じゃないのか」

「賢也と一緒にすんなっ。そんなの、なったことないっ」

「言いきったな」

「ホントのことだもん」

ぷいっとそっぽを向く。
怒った顔も可愛いと思ってしまうのだから、愛とは不思議なものだ。



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